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  • 2016/03/03(木)
  • 農業を志す方々へ- ゆーちゃんふぁーむ 太田裕輔さん -

“自然”を大切に、資源が循環する地域を作りたい

 

=地元愛に溢れた青年=

生まれも育ちも千葉市越智町の太田裕輔さんは、3年前に新規就農。採卵養鶏年間約60種の固定種・在来種の野菜の栽培をしています。

昨年よりご自身が”直接”お届けする個人宅配をスタート。現在約30軒のお客様がいらっしゃいます。

太田さんのこだわりは”地元で循環する農業”を展開すること。そのために様々な工夫を凝らして営農されています。

地元を愛する青年。彼はどのような想いで農業を始め、現在に至るのか。

ご自身の経験を振りかえりながら、これから新規就農する方へのメッセージをお聞きしました。

 


(ゆーちゃんふぁーむ 太田裕輔さん)

 

【太田裕輔さんプロフィール】

千葉県千葉市緑区越智町出身。

近所に畑や田んぼがたくさんある環境で育ったため、小さな頃から農業に触れて育つ。

神田外語大学卒業。

大学4年生になり、一般企業への就職活動を始めてはみるものの、違和感を覚え農業の道に進む。

現在、1haの農地で約60種もの四季折々の野菜を育て、100羽程の鶏を飼育している。

 

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なぜ新規就農したのですか?
大学在学中、平和学の授業を受講したとき、まずに興味を持ちました。その後、オーストラリアを訪れた際にオーガニック野菜について勉強したことが、農業に興味を持ったきっかけです。大学4年生の頃、周りに流される形で就職活動をスタート。1回目の合同会社説明会への参加で違和感を感じてしまい、就職活動をやめてしまいました(笑)。そして自分のやりたいことは何なんだろうと突き詰めて考えていくうちに、生きるために必ず必要なことをしたいと感じました。その時に、衣食住のうち”衣”、”住”は今あるものを活用すればなんとかなるけれど、だけはどうにもならないと思ったんです。だから、食料を作り出すことのできる農業をやろうという考えに至りました。さらには、地元が好きで、地元でなにかをしたいという気持ちがあったので、ここ越智町で就農しました。そうして少しずつ農業をやり始めたときに、3.11大震災が起こりました。改めて、「人が生きていくためにはやはり食料を作ることが大切だ」と実感して、農業をやっていこうという気持ちが確固たるものになりました。

 

 (固定種のインゲン、黄莢黒三度の種)

固定種・在来種
昔から続く、親から子、孫へと味や形が固定されて継承されていく種子。現代では、病害虫への抵抗力や食味を良くするために品種改良されたF1品種が主流となっている。 

 

■どのようなこだわりを持って養鶏・農業をしていますか?

なるべく自然に近い養鶏・農業のスタイルを選ぶこと。地域の輪に入り、つながりを持つこと。この2点です。

 

✔自分たち的自然農

私たちは、固定種・在来種を栽培しています。固定種の野菜は、その野菜本来の味が楽しめます。例えば、ニンジンなら、えぐみが少なく、苦手な人でも食べられたという声を聞いたりします。ただ、香りが強いのでニンジンの匂いが苦手な人は苦手なようです()。また、化学肥料、農薬はもちろん使わず、肥料や飼料を地域の資源を使って自家製造しています。肥料は、鶏を飼っているので、自家鶏糞と地域の農家さんや飲食店の方から、米ぬかや魚のアラを頂いて、混ぜ合わせて作っています。有機農業が増えていますが、地域で資源が回っている、資源循環農業が本当の意味での有機農業だと思うのです。最近は、自然農法について色々な情報がネットや本、知人から集まってきて、実践したいけどよくわからない場合もあります。そんな時は妻と2人で話し合って、「その情報が自然なのか自然じゃないのか」独自に判断しています。

 

✔地域の輪に入る、顔の見える関係を築く

地域の方から資源をいただくことで、より自分を知ってもらえるようになり、地域の方をより知ることができるようになりました。その積み重ねで地域の輪に入っていくことができると思っています。また、野菜セットの宅配は自らが運んで、お客様と顔の見える関係を築いています。厳しい意見をいただくこともありますが、お客様と直接つながりを持ちお話しすることはとても楽しいです。

 

(庭先の自家製腐葉土)

※ゆーちゃんファームでは、自家製腐葉土を苗床の土としてメインに用いて、余りは「有機物マルチ」としてナスなどの畝に敷いています。

 


新規就農はお金がかかると思います。経費を抑える上でどのような工夫をしていますか?

必要なものしか買わないことと、できる限り自力でやることですね。また、地域の輪に入ることで足りないものを譲っていただけたり、お互いに助け合いができるので、地域の方と積極的に話すことも大事だと思います。私の場合、近隣の農家さんからいらない農機具がないかお尋ねしてみたところ、何点か譲っていただくことができました。すぐには使えない場合が多いものの、直せるものは直して有効活用しました。土地を取得するにしても、地域の方からの信用がないといけないので、明るく、積極的に話しかけることは農業をやっていく上で重要なことだと思います。宅配も、遠い場所へ行かずに、自分が無理なく届けられる範囲にしています。

 

(熟読していた本の内容を説明する太田さん)

 

今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?

越智町をはじめ、近辺の地域は高齢化が進んでいます。若い人が増えれば地域が活性化していくと思うので、新たに農業をしたいという方を全国から研修生として受け入れ、後継者育成の場を作っていけたらと考えています。そして、担い手を増やし、地域の資源循環を更に高め、地域の食料を地域で賄えるような、自給自足の町づくりをしたいと思っています。そして今まで通り楽しく、顔の見える関係でやっていきたいと思います。

 

  

 

 (太田さんと奥さんの真由美さん)

 

新規就農を目指している方にメッセージをお願いします。

就農スタートしてから、挫折することや考えがぶれることが必ずあります。そんな時私の場合、「なんで農業をやりたいのか」、自問自答をします。初心に返って、「農業をやりたい理由」を常に忘れないようにすると良いです。また、好きや楽しいという気持ちだけで農業をやっていくことは難しいです。「売り先があるのか」、「自分がやりたい農業が地域に合っているのか」「消費者へのアプローチはどうするのか」といったことを考えておくべきです。好きよりも1人の経営者として継続できるかが重要です。そしてやはり地域に馴染むことが大切です。挨拶はしっかり。時にはお付き合いをして、地域の人との会話を楽しむこと。真摯に農業に取り組んでいる姿を示していれば、地域の人は必ず受け入れてくれます。そして地域の方々がいてくれたからこそ、ゆーちゃんふぁーむは今日も野菜を宅配できていると思っています。皆さんも、自分の想いと向き合いながら、地域への意識を大切に農業に取り組んでください!そうすればきっと楽しい農業LIFEを送れますよ!

 

【取材を終えて】

笑顔が素敵な太田さん。とにかく明るく、話している人を元気にしてしまう魅力を持っている方でした。「自給自足の町」として地域を盛り上げていきたいと語る姿は、かっこよく輝いていました。農家1代目として農業に勤しむ太田さんのこれからが楽しみです。若い力が農業を変え、支えていくのだなと強く感じられる取材でした。

 

ゆーちゃんふぁーむ FBページ:https://www.facebook.com/yusukeorganicfarm/

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