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  • 2017/01/11(水)
  • 畜産業!? 養蜂家の仕事とは?

皆さん、農業の世界に蜂が活躍しているってご存知ですか?

その蜂を専門に扱う「養蜂家」という仕事があるんです。養蜂は分類でいうと畜産業にカテゴリーされます。

今回は、茨城県で新規に養蜂家となった山田広司(ひろじ)さんにお話を伺いました。

 

東京でサラリーマンを15年間経験し、養蜂家となった山田さん。蜜蜂による花粉交配をメインに、はちみつの採蜜にも挑戦しています。

 

 

【写真:山田広司さん】

 

Q. 「養蜂家」について教えてください

養蜂家は大きく分けて2種類います。はちみつをメインにしている人と、花粉交配をメインにしている人と、この2つですね。どちらも一緒にやっている人もいます。

私の場合は花粉交配の方に重きを置いています。最初ははちみつでいこうと思ったんですが、なかなか現実は厳しいんですよ。蜜があんまり取れないっていう理由なんですが。今は、はちみつは趣味の領域でやっていますね。

 

Q. なるほど。そのはちみつが取れない理由はどんなことが挙げられますか?

採蜜場の確保ができないというのが大きな理由ですね。それと今年に関しては花粉交配用の群数が少なく、まずは増群がメインの作業となるので、蜂の食料となる採蜜は行わなかったというのがあります。群数というのは、一つの箱で一群と数えて、そこに嬢王蜂と働き蜂がいるんですよ。養蜂家は群数でおおよその規模が分かるのですが、うちは現在150群数で、少ない方です。ですので、今は群数を増やしていく段階ですね。また花粉交配する人とはちみつを取る人では、群数が違ってきます。

 

Q. 群数を増やしてから、出荷の量をとっていかないとなかなか厳しいということなんですね。収入面は花粉交配という事ですが、具体的にどんなお仕事なのですか?

簡単に言うと、花粉受粉を行う農作物に蜂を貸して、受粉の手伝いをします。それは比較的増えて来て、定期的に仕事があるので、収入面はそちらになりますね。

 

 

 

Q. なるほど、花粉交配をしつつ群数を増やしていくということなんですね。150群数になるまでに初めてから何年かかりましたか?

脱サラをして養蜂家になったので丸2年目です。今は、大体週6日で養蜂をしていますね。

 

Q. なるほど。では、養蜂家になろうと思ったきっかけを教えてください

元々は前の会社で輸入雑貨卸しをやっていたんですよ。「銀座ミツバチプロジェクト」という取り組みがあるんですけど、それを参考に、自分の会社の屋上で蜂を飼いだしたんです。会社としては商売目的ではなく、自然食を扱っていたので何かの足しになるかと思い、実験的にやったんですよね。それが始まり、会社の屋上でしばらく飼っている内に、愛着も沸きますし面白いなと思ってきたんですよ。

 

Q. 生き物を扱うとほんとに愛着が湧いてきますよね。面白い取り組みをする会社でしたね。その後はどうなったんですか?

蜂は春ぐらいに、分蜂って言って巣別れをするんですよ。養蜂の技術が未熟だと巣から勝手に飛び出していきます。たまにニュースにもなっているのですが、サッカーボール位になるんですよ!蜂がそんなにまとまってきたら、さすがに東京では人も多いし、迷惑がかかるってことで、茨城の支社に蜂を持ってこられて…

そこで茨城で面倒みたのが私だったのです。それから興味が湧き、もっといろいろと調べていくうちに、これは面白いぞと。もうそれからですかね。

 

Q. その事業を引き継いだって事ですか?

会社からそのまま引き取ったっていう形ですかね。趣味程度のものだったので、最初は入門セットみたいなものでした。そのままもらったっていう形です。サラリーマンとして15年勤めてたんですけど、どうしてもこのままいくのはつらいなと、時間の拘束が嫌だったのと、自然を求めていたんですよね。元々閉じ込められるのが好きではなかったので。動機が不純ですかね()??

 

Q. いえいえ、そんな事はないと思いますよ。そこから独立までどうやって勉強したのですか?

全て独学です。世襲でやっているところが多くて、それ以外は養蜂家に弟子入りするのが一般的なのですが、茨城県はそこまで大きくやっているところがなかったので、それならな自分で勉強してやってしまおうと思いました。

 

Q. 実際に初めてみてどういう生活に変わりましたか??

自分で時間を調整して、自然の中で暮らすのは楽しいですよ!

時期によって変わりますが、茨城県の場合、繁忙期は春3月から6月くらいまで、蜂が一番活気づくので、採蜜したり群勢と増群したりします。それ以降は一回蜂も落ち着くので作業的には楽になります。そして秋にはまた活気ついて繁忙期になり、12月、1月、2月はお休みというか準備期間になります。

時間的には繁忙期は、日の出とともに始まって、午前中を中心に仕事をしていますね。繁忙期以外の時期は蜂だけではまだ食べていけないので、他で農業のバイトをしています。

ちなみに養蜂家でも、採蜜できる花の開花に合わせて全国を移動する移動養蜂を行っている方もいます。そのような方たちと地域の養蜂家が、全国の優良な採蜜場を以前からきちんと管理して使用されていますので、新参が同じ場所で採蜜をすることは遠慮してしまいます。はちみつを買い取って販売するのは可能ですけど、蜜を自分で採って収入のメインにするのはまだ難しいですね。花の開花時期も限られているし、しかも自然がどんどん減ってきているので、なおさら厳しいです。

 

Q. 養蜂家のやりがいについて教えてください

蜂を増やしたり、群の大きさが変わってくることが単純に嬉しいですよね。

畑でも、面積を大きくしてたくさん収穫できれば、喜びに変わって来ないですか?

養蜂家も、良いはちみつが取れた時はやっぱり嬉しいです。そしてお客さんから美味しいって言われたときもやっぱり嬉しいです。それがあるから、今まで続けてこられました。

それでも、養蜂家のはちみつ取りと花粉交配は大きく伸びる業界ではないと考えています。特に花粉交配に関しては総数の奪い合いになるので、新規参入してもまずは付き合いから始まって、同じ地域内だけでは他の養蜂家さんとバッティングしてしまうこともあり、厳しいと思います。でも、需要はありますから、しっかり技術を磨いて、ブランド化できる様なはちみつ作りをしていきたいですね。そして次世代にも引き継いでいきたいです。こういうやり方もあるのだと提示したいですね。

例えば10月から4月までは苺農家に蜂を貸して、それ以外の期間は露地だとりんごやブルーベリーや梨でも使うので、収入を確保しながら、やり方をだんだんと見つけていけるんです。また、ハチミツの味は全て花で変わってくるんですが、そこも研究しがいがあるんですよ。日本人は癖がないものを好むのですが、いろいろな花を試して、新たなはちみつを開発しています。はちみつは毎年同じ物は取れないですからね。

 

Q. 最後に素朴な疑問ですが、蜂に刺されたりはしないんですか?

しょっちゅう刺されますよ() 刺された瞬間は痛いですが、まぁ慣れます()

可愛い子供たちなので平気です!

蜂の寿命って働き蜂は1か月位で、冬は冬眠するので半年位なんですよ。やはり寂しいものです。女王蜂は役割により34年位生きるので、もうパートナーですね。

 

 

 

【取材を終えて】

話し方も丁寧で、物腰も丁寧な山田さん。はちみつ作りにもこの丁寧さが反映されていることを感じました。趣味はサーフィンだそうで、養蜂とライフスタイルも一緒に構築していき、次世代に新しい養蜂家のスタイルをきっと提案していくことでしょう。パートナーと育てるはちみつで、ぜひ養蜂家の道しるべになっていただきたいです。本当にありがとうございました!

 

―記事執筆者―

高橋直也氏

19841018日生まれ 青森県出身

青森大学卒業後、はるやま商事で販売業を学び上京、一年後、夢であったライター業に移行する。

作家の元で3年間修行。その中で長野県の川上村のレタスを紹介してもらい、

その美味しさに惹かれて農業の世界に飛び込む。

現在は、農業現場の現場と野菜伝えるべく、全国の農家を手伝いながら訪問している。

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