農業を志す方々へ　―株式会社やさいの樹　代表取締役　塚本　佳子さん―

2013/10/29(火)
農業を志す方々へ　―株式会社やさいの樹　代表取締役　塚本　佳子さん―

「農業をやってて良かったなと思う時間は全体の1割1分。残りの8割9分は大変だし、しんどいと思っていますよ（笑）」

「でも、その1割1分がとても大きなモチベーションになるんです」

そう話すのは株式会社やさいの樹代表、塚本佳子さん。

平成20年に静岡県菊川市で新規就農を実現された塚本さんにお話を伺いました。

【塚本　佳子さんプロフィール】

神奈川県藤沢市生まれ。

中学時代はソフトボールに熱中。部長として活躍。

その当時の顧問の先生の影響を受け、「将来は途上国に行って貢献したい」という気持ちが芽生える。

大学（日本大学農学部（現、生物資源科学部））卒業後、すぐに海外青年協力隊の野菜隊員として南米エクアドルへ行き、現地中学の農業実習の教師となり、新規プロジェクトの立ち上げに成功。

帰国後、鳥取大学乾燥地研究センターの修士課程に進む。2年間の課程修了後、宮古島の農業法人にて4年間農業を学ぶ。ここで農作業に汗を流しながら、肥料設計やハウスの建て方など、農業技術全般を身に付ける。

その後、再度海外協力隊に参加し、今度はアフリカ・ザンビアで約2年半活動。

帰国後、株式会社野菜くらぶの独立支援プログラムを利用して1年間の研修終了後、平成20年に独立し、今に至る。

【写真：塚本さん（キャベツ畑にて）】

■やさいの樹では何を作っていらっしゃるんですか？

夏はトウモロコシとオクラ、冬はレタスとキャベツを作っています。現在は私の他に3名の従業員と6名の海外実習生を受け入れています。3名の従業員は20代～30代の若手が中心で、私の厳しい指導にも耐えて頑張ってくれています（笑）

■塚本さんにとって農業の魅力はなんですか？

当社では作った野菜を契約栽培で出荷しています。大手の食材宅配会社やスーパー、ハンバーガーチェーンなどを通して最終的にエンドユーザーである消費者の皆さまの元へと届けられているのですが、収穫祭などのイベント時やメッセージカードなどで消費者の皆さまの声を直接聞くことのできる機会があります。その時に「美味しい」「こんなレタス食べたことない」などと褒めていただけることが何よりの喜びです。普段は台風などの自然災害もありますし、思い通りに行かないことも多く、本当に大変なんです。休みたい！疲れた！と声を大にして言いたくなる時もありますが、日本の食を支えているんだという責任感もありますし、毎日の頑張りが、消費者の皆さまの笑顔につながっているんだと思うととてもやりがいがあります。8割9分は大変ですが、農業っていいですよ！

【写真：やさいの樹従業員の皆さん】

■これからの目標はありますか？

現在の規模が私が中心となって動くには限界かなと思っています。品質を決して落とすことなく、維持しながら規模を拡大していくためには私の右腕となる人材を育てていく必要があります。美味しい野菜を作ってもっとたくさんの人に笑顔になってもらうために「野菜づくり」だけでなく「人づくり」をしていくことが当面の目標です！

■これから農業を目指される方にメッセージをお願いします

農業は自然相手、生き物相手の仕事ですので、とても大変な仕事です。むしろ、ほとんど大変なことしかないと言ってもいいくらいです。ですが、その苦労を乗り越えていいものができ、お客様に喜んでもらえたときの感動は格別です。私は、農業体験に来た人には“いいこと”は決して言いません。作業を通じてありのままの農業の大変さを実感してもらって、それでも頑張っていきたい！と思える人じゃないと続かない仕事だと思います。

これから農業をやりたい！とお考えの方は、まずはやってみることをおススメします。当社でも体験したい！という方は受け入れをしますので、やってみたいという方はぜひチャレンジしてみてください！もちろん、来てもらっても厳しいことしか言いません（笑）

―取材を終えて―

小さい頃から活発だったという塚本さん。ご経歴を伺っても、その行動力には驚かされるばかりです。海外や国内のいろいろなところで農業の勉強や実習をされ、ご自身で始められた経験があるからこそ、農業の大変さもやりがいも人一倍わかっていらっしゃるんだと思います。8割9分が大変で、楽しみは1割1分しかない。でも農業をやっていることに後悔は全くなく、むしろ農業がいいとおっしゃっているのは、きっとその1割1分がとても大きな1割1分だからなんだと思います。やさいの樹では、現在3名の若手従業員が活躍中です。ぜひ塚本さんの技術、経験を吸収して、さらに大きなやさいの樹になることを願っております。